架線を張るという狂気 [レイアウト]
鉄道模型に架線を張るというのは誰しも一度は憧れ、悩み、諦めるもの。
どんなに精巧に作られたレイアウトでも架線が張ってあるものはほとんど存在しない。
JAMの出展作品でも架線付は1つか2つという世界なので、もう鉄道模型に架線を張るのはちょっと頭おかしい。
なぜ、そんなに再現率が低いのか。
鉄道模型は線路に電気を流し車輪から給電するため、線路が汚れると模型は走らなくなる。だからマメに線路を磨き上げるというカルマが待っている。線路磨きに架線は邪魔。
さらに、レイアウトをあれこれ弄るうちに架線に手や服が引っかかってぶっ飛んでいき、その修復作業に追われて模型を走らせるどころの話しじゃなくなり、もうやめた!となる。
それを見越して日本の鉄道模型メーカーはこぞって架線を製品化すらしていない。
そのため日本では架線柱はあるけど架線はなく、パンタグラフは上げるけど架線はない。架線は見る者の脳内で高度処理された幻影として張られている。んだと思う。
しかし、鉄道模型本場のドイツでは架線を普通に張るのです。(もちろん張らない人もいます)
架線関係に特化したSommerfeldtという会社もあるぐらいだから凄い。
当然車両に設置されるパンタグラフは日本のようなダミーではなく、バネの力で跳ね上がり集電もできる優れもの。
集電に関して、最近の製品は標準装備しなくなったけど、それはDCCが普及して必要性がなくなったんだと思う。
昔は線路と架線に別系統の電流を流して1線路2列車を実現していたようだけど、それはDCCが解決してくれた。
そんな訳でヨーロッパでももう必要なくなった感のある架線だけど、パンタが架線を捉えて上下しながら走行するのを見るのはやはり楽しい。
すごく悩んだけど、ウチでは架線を張ることにした。鉄道模型界では「買わずに後悔するより買って後悔しろ」という悪魔のささやきがまかり通っている。架線も同じ。「張らずに後悔するより張って後悔する」ことにした。
踏み込んではいけない地獄の始まりとその成果は過去ログを参考。
で、今まではトンネル内に設置してきた真鍮線丸出しの架線だけど、今回は先日塗装したトラス橋に架線を設置してみた。
まずはサンプルの紹介。
これは先程紹介したSommerfeldtではなく、ストラクチャメーカーVollmerの架線セット。
数年前にオクで拾っておいた。
値札はお店に並んでた頃のもの。オクではもう少し安く仕入れることができた。
正規のセット内容ではなく、プラスアルファの架線と架線柱も入っていた。
黄色く変色してベトベトになったセロハンテープを剥がして架線と架線柱をとりだす。
ディテールは二の次なのがわかる。
なぜなら、実際にパンタが架線を滑っていくし、電気を流すので頑丈であることが最優先。
ここに架線を取り付けてみる。
こんな感じ。
これだけでしっかりパンタの跳ね上げる力を支えてくれる。
製品の構造やサイズを見て、ここから全てを自作する。
ウチのレイアウトに既製品を使うと、マジでとんでもない価格になってしまうから。
おそらく架線だけでウン十マン円かかる。
今回は先日塗装したトラス橋への架線設置。
トラス橋のサイズに合わせてブラケット部から作る。
かまぼこ板的な木材に形を書く。
0.5mm経の洋白線と燐青銅線。
2種類使う理由はこれといってないけど、前にchihiroさんという方が分けていた。
chihiroさんはさらにステンレス線も使って強度を確保していたけど、ステンレスはハンダでくっつきにくいので省略。
こいつをカットしてかまぼこ板に両面テープで固定する。
治具を使って吊架線を通す穴を作る。
ここだけ燐青銅線。
トロリーはクリップを作ってそこに留める。
これを全てハンダで固定して複線用ブラケットの完成です。
5つ作ったけど4つでよかった。
次に架線を作る。
かまぼこ板に罫書きして、今度は洋白線のみを固定する。
トロリーと吊架線の部分は溝状にしてハンガーが転がらないように工夫してみた。
フラックスは塗布せずフラックス入りハンダで頑張ったけど、なかなか難しい。
ちょっとミスると玉になってしまう。
うまくいくときとそうでないときの違いが全くわからん。
ハンダ付けしてトロリー線をヤスリがけして完成。
ハンダも難しいけど、トロリー線を滑らかに仕上げる手間も結構大変で弱気になる。
ちょっとやり方を変えないとダメだな、こりゃ。
まずは架線の高さを揃えるための治具作りから。
ブラケット部は線路面から38mmで設定しているので、これがあると便利。
0.6mmの穴に0.5mmの棒を3本まとめて通す。これはこれで狂気。
最後に架線をブラケットに取り付けて完成です。
と思ったら。
取り付けるときにハンガーが1箇所トロリー線から外れてしまいました。
取り付け方やそもそもの構造に改良の余地ありってところでしょう。
ここは後日修正することにします。
ではまた!